株式会社パーソル総合研究所が「カスタマーハラスメントに関する定量調査」を発表!カスハラ被害経験や社内でのセカンド・ハラスメントに関する実態が明らかに

株式会社パーソル総合研究所は、過去3年以内にカスタマーハラスメントを受けた被害経験者3,000人を対象とした「カスタマーハラスメントに関する定量調査」を行いました。

顧客による理不尽な要求や威圧的な言動のことを指すカスタマーハラスメント、通称カスハラ。近年、カスハラの問題は深刻化していて、社会的な注目を集めています。

厚生労働省や東京都が新たな制度づくりを検討する中、独自のカスハラ対策を強化(模索)する企業や自治体も。今回の調査は、サービス業におけるカスハラの実態とその影響を明らかにし、カスハラによる影響を防ぐための効果的な人材マネジメント施策や、カスハラに強い組織づくりのための具体的な指針を示すことを目的に実施されました。

調査の結果はもちろん、深刻化するカスハラに企業がすべきことなど、気になる対応策についてお伝えしていきます!

※構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しています。個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。

カスタマーハラスメントの現状とは?職種や年代別に調査!

カスハラ被害経験について調査を行うと、顧客折衝があるサービス職の35.5%が「過去に顧客からのカスハラ・嫌がらせを受けた経験がある」と回答。また、20.8%が「3年以内に被害経験がある」と答えました。

被害経験者のうち32.6%が「ここ3年でカスハラ経験が増加」と回答。「減った」と回答した人はわずか13.8%にとどまりました。

職種別のデータを出したところ、3年以内のカスハラ経験率が最も高い職種は福祉系専門職員(介護士・ヘルパーなど)で34.5% 。経験率と離職率をマップ化すると、福祉職(介護士・ヘルパーなど)、宿泊サービス、受付・秘書は経験率と離職率がともに高い結果となりました。

性年代別では、男女ともに若年層のカスハラ経験率が高いという結果に。雇用形態別では、自営業のカスハラ経験率が高く、 27.6%でした。

ネットにおけるカスハラ被害経験も…加害者の属性についても明らかに

次に「3年以内に顧客から口コミサイトやSNSで嫌がらせの投稿をされた経験があるか」について調査。「経験がある」と答えた人は全体の34.2%で、そのうち「投稿5回以上」の被害経験を持つ人は13.5%でした。

カスハラが起こった場面の調査では「普段就業している場所」が68.1%と最も多い割合に。被害内容は「暴言や脅迫的な発言」が60.5%と最も多く、次いで「威嚇的・乱暴な態度」が57.7%、「何度も電話やメールを繰り返す」が17.2%という結果になりました。

カスハラ加害者の属性で割合が高いのは「初対面の客」で 46.3%、次に「常連客」で 41.0%という結果に。 性別をみると女性よりも男性が多く、高齢層ほど高い割合であることがわかりました。

カスハラが起きたあとの現場や会社の対応は?一部ではセカンド・ハラスメントも…

会社側の対応について調査すると、「嫌がらせの被害を認知していたが、何も対応はなかった」が 36.3%で最も高い割合に。「認知無し」も19.3%で、会社側から対応があった場合は「事実確認のためのヒアリング」が最も多い44.5%となりました。

さらに、被害を相談した人の25.5%が社内での「セカンド・ハラスメントを経験した」と回答。内容としては 「会社や上司からひたすら我慢することを強要された」(11.0%)、「軽んじられ、相手にしてもらえなかった(8.9%)、「一方的に自分自身に責任転嫁された」(8.2%)などがありました。

カスハラを受けた当人が感じることとは?「転職も検討」

カスハラを受けた直後の心境を聴取すると「仕事を辞めたいと思った」が38.0%、「出勤が憂うつになった」が45.4%と高い結果に。また「次の転職時は顧客やり取りの無い仕事につきたい」と感じた人も37.5%いることがわかりました。

1年以内の「カスハラ経験あり層」と「無し層」を比べたところ、「あり層」は転職意向が1.8〜1.9倍高いという結果に。 また、年間の平均離職率は1.3倍高い傾向が見られました。

カスハラの予防・解決策は講じられている?期待度とのギャップも

従業員が認知しているカスハラ予防・解決策は「実施されていない」が43.0%と最も高い割合になりました。取り組んでいる会社では「社内に相談窓口が設置されている」(47.5%)、「クレームやハラスメントの事例が社内で共有されている」(39.5%)などの予防策を講じていることがわかりました。

「カスハラ対策・予防施策のギャップ」について調査すると、「電話応答での自動録音」や「対外的な方針・態度の公表」「名札のフルネーム表記廃止」といった施策が、従業員の期待度に対して企業ではあまり実施されていないことがわかりました。

カスハラの影響を最小化するために必要なのは「信頼資産を貯める」「心の負債を減らす」こと

カスハラへの対策として必要なのは、何かあっても同僚・会社・上司が助けてくれる「信頼資産」を貯めておくことと、トラブルが起こると自分では何もできない・対応できないと感じる「心の負債」を減らすこと。これにより、カスハラに強い職場をつくることができます。

何かあっても同僚や会社、上司が助けてくれるという「信頼資産」が高い群は、低い群と比べ(3層比較)、カスハラ後に「仕事を辞めたい」と思った割合がマイナス23.2ポイントと、およそ半減することが判明。「心身に不調をきたした」も14.9ポイント低くなったものの、 トラブルがあると自分では何もできない・対応できないと感じる「心の負債」は増加しました。

「信頼資産」と「心の負債」に関わる3つの要素

信頼資産と心の負債には、「組織文化」「カスハラ知識の有無」「相談ネットワーク」の3つの要素が影響しています。信頼資産と関連が高いのは「チームワーク志向の組織文化」「会社の対応やトラブル対応・事例などの知識」「上位層と同僚の相談可能人数」。チームワーク志向で自由度が高く、開放的な文化があると、信頼資産が高い組織が生まれます。

一方、低い組織は顧客意向の尊重と属人思考が強いという特徴が。カスハラ知識と相談ネットワークが高い層ほど信頼資産も高く、心の負債が低くなっていました。

会社の対応や上司の行動によって変化する「信頼資産」

カスハラ経験後の会社対応の有無によって、その後の信頼度は変化していることが明らかに。カスハラについて会社が認知していながらも対応がなかった場合は、その後の信頼度や相談しやすさが大きく下がり、対応があった場合は上がることがわかりました。

部下の回答傾向から「上司への信頼度」の高いタイプと低いタイプを抽出し、タイプ別の比較を実施。すると、信頼度が高いタイプでは、部下の成長への志向性が高く、上司が傾聴や観察、成長支援、率先垂範行動などをしていることがわかりました。一方、信頼度が低いタイプは顧客志向だけが強く、平等性や民主性などの他項目には伸びがありませんでした。

調査結果からの提言:パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林祐児さん

現代社会におけるカスタマーハラスメントについて

昨今、カスタマーハラスメント(顧客からの嫌がらせや不当な要求)に対して世間の注目が集まっています。東京都が全国初のカスハラ防止条例制定に動いたり、UAゼンセンがカスハラのガイドラインを発表したり…、民間の議論も活発化しています。

 

その背景にあるのは、現場の人手不足。顧客サービス職の人材不足がますます高まる中で、カスハラによる離職は事業・ビジネスの存続に関わる深刻な問題となっているのです。今後さらに社会問題化していけば、顧客サービス職を選ぶ労働者はますます少なくなってしまうでしょう。

調査において明らかになったこと

本調査を実施したことにより、ホワイトカラーを含めた顧客折衝のある職種について広範囲に及ぶカスハラの実態があることが確認され、それが近年増加傾向にあることも示唆されました。特に福祉・医療職は高頻度で発生しています。

 

その一方で、会社の対応は後手に回っているのが現状。事前予防も含めて対応している企業が4割に満たないだけでなく、一部ではセカンド・ハラスメントのような我慢の押しつけや従業員への責任転嫁が行われている実態も明らかになりました。

カスハラを防ぐ・減らすために企業がするべきことは?

不特定多数の客との折衝がある中で、カスハラ発生を完全に防ぐのは難しいこと。そのため、人材マネジメントの観点からは「未然に防ぐ」よりも「カスハラに強い組織を創る」という発想が重要になってきます。

 

カスハラの負の影響を最小化するためにデータからわかる必要なことは、「みなで助け合えるという職場の信頼資産を貯めること」と「トラブルが起こっても何もできないという心の負債を減らすこと」の2つ。

 

予防的措置、研修訓練による知識付与、マネジメント改革はこうした「カスハラに強い組織づくり」に直結しているため、企業として積極的な施策を行うことが必要です。

大切なのはアフターフォローができる強い組織づくり

カスハラ後にも被害者を適切にケアし、事例として共有していくことで、会社への信頼資産を貯めることにもつながっていく。また、社内だけではなく対外的に会社としての態度や対策を表明していくことも求められています。目指すべきは「増えるカスハラに怯え続けること」ではなく「カスハラが起きたとしても大丈夫」と思えるような強い組織づくりなのです。

調査概要

  • 調査名:カスタマーハラスメントに関する定量調査
  • 調査内容:
    ・サービス系職種における顧客からのハラスメント・嫌がらせの実態とその影響を確認する。
    ・ハラスメントの負の影響を防止するための人材マネジメント・施策の在り方について示唆を得る。
    ・医療・福祉領域のペイシェントハラスメントの実態と取り組みについて明らかにする。
  • 調査対象:顧客折衝のあるサービス職 全国20~69歳男女
    【SC調査】n=20,108s
    【本調査】3年以内カスタマーハラスメント被害経験者 n=3000s
    対象職種:
    事務・アシスタント、営業、カスタマーサポート、飲食・宿泊接客系職、理美容師、航空機客室乗務員、コンサルタント、教員、ドライバー、警備、医療・福祉系職員
  • 調査時期:
    自由回答調査:2024年 2月6日 – 2月9日
    定量調査:2024年3月21日 – 3月25日
  • 調査方法:調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
  • 調査実施主体:株式会社パーソル総合研究所

関連サイト

カスハラ対策が組織体制を見直すきっかけに!みんなが気持ちよく働ける職場を目指そう

接客業に従事したことがある人なら、一度はカスハラを受けたり、その現場に遭遇したことがあるのではないでしょうか?

疑問を解決するために意見するのは良いことですが、「気に入らないから」と感情のままに暴言を吐いたり、相手自身を傷つけるような言葉を口にするのは間違っていますよね。

私も接客業を経験したことがありますが、現場にはどうしても「従業員<お客様」という力関係が存在すると感じていました。

しかし、カスハラはほとんどが突発的に起こることなので、パーソル総合研究所の小林研究員が仰ったように「完全に防ぎきること」は不可能。となると、やはり組織側の手厚いアフターフォローや、社内で一丸となって対策を講じていくことが大切で、それが結果的にクリーンな組織づくりや離職率の減少に繋がっていくのではないかと思いました。

社会もカスハラの減少に向けて動き出しているとのことなので、これを機に人手不足という問題も解消されていくと良いですね。

[パーソル総合研究所]

調査結果・画像の出典:「パーソル総合研究所」

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