2022年は厳しい世界情勢の中、様々なマンガがヒットしました!具体的には、『東京卍リベンジャーズ』や『SPY×FAMILY』など、アニメ化されたものなど様々。
実は、昨今は出版不況が叫ばれながらも、マンガ市場は拡大を続けていて、2021年のコミック市場は『ジャンプ』黄金期とされた1995年を上回っているそう(公益社団法人 全国出版協会 出版科学研究所「日本の出版統計」 https://shuppankagaku.com/statistics/comic/ より)。
最近では、社会的にも、マンガへの関心が高まっていますが、まだまだ厳しい世界情勢が続くと見込まれる2023年はどのような作品が流行するのでしょうか?
今回、トッパングループが手がける電子書籍ストア「ブックライブ」の名物書店員のすず木さんに、いちごあんでは、お話をお聞きする機会をいただけました!
すず木さんは、公私共にマンガをかなり読んでおり、10年超、年間2,000冊のマンガを読まれているとのことです。
※以下の作品リンク先は、ブックライブのページとなります。
2022年のヒットマンガの三大トレンドは「令嬢系マンガ」「メイクマンガ」「推し活マンガ」!
すず木さんは、2022年のヒットマンガの三大トレンドとして、「令嬢系マンガ」「メイクマンガ」「推し活マンガ」を挙げています。
「令嬢系マンガ」は安心して読める!
- 『「きみを愛する気はない」と言った次期公爵様がなぜか溺愛してきます』(https://booklive.jp/product/index/title_id/20030734/vol_no/001)
©水埜なつ ©三沢ケイ/フレックスコミックス
©廻/ライブコミックス
最近、 “なろう系” などのライトノベルからマンガ化されるケースが増えてきており、「令嬢系マンガ」などライトノベルから影響を受けるマンガも多くあります。
具体的には、ファンタジーの世界を舞台に、突然イケメン貴族に結婚を求められる「契約結婚モノ」、悪役令嬢に転生してしまいバッドエンドを回避するコメディ系の「悪役令嬢モノ」、スピリチュアルな力を持つ高貴な女性が陰謀に遭遇してしまいますが、追放された亡命先で幸せを手に入れる「聖女モノ」など、様々なシチュエーションでの “令嬢” がどう幸せを手に入れるのか、非常に多くの方々から期待されているジャンルです。
「令嬢系マンガ」も、すず木さん曰く「外れがなくてどれも面白い」ということで、社会情勢が厳しい中、 “安心して読める” ということをメリットとして挙げられています。
個人的にも、社会情勢とマンガのトレンドが結びつくと考えており、現実世界と切り離して作品を楽しめる「令嬢系マンガ」を “安心して読める”というのは、2022年のマンガのトレンドとして非常に痛感します。
もちろん、2023年でも、「令嬢系マンガ」の人気はまだまだ続いていくと思います。
「メイクマンガ」が人気の中、方向性が変わってきた
2022年のヒットマンガの三大トレンドの一つの「メイクマンガ」。
具体的には、「メイクアップアーティストを目指す男子高校生を描いた物語」や「平凡なサラリーマン男性が美容に目覚める物語」「メイクにより第二の人生を歩む物語」など、メイクと人生の密接さを描く作品が人気を博しています。
すず木さんは、この「メイクマンガ」に関する分析として、最近では、「自分の人生においてメイクとは何か?」とか、「メイクをすることで人生をどう変えていくか」といった作品が増えているとしています。
今までは、「メイクマンガ」では、ハウツーものが多かったようですが、2022年では、方向性が変わってきたのが大きな特徴と言えるようです。
筆者がプライベートでもかなり気になる『恋する(おとめ)の作り方』など、時代が進むにつれて、社会が求める「メイクマンガ」が変わってくるのも、わかる気がします。
「推し活マンガ」も熱かった!
2022年の流行語とも言える “推し活” 。アイドルやアーティストでなく、マンガ・アニメの2次元キャラクターを推すことが当たり前となった世の中ですが、2022年のマンガトレンドにもしっかりと反映されています。
具体的には、マンガの世界でも、推しと主人公との関係性を描く「推し活」そのものを描写した作品が増えたほか、「推しとの恋愛を描いた物語」や、「究極の推し活とも言えるホス狂(ホスト狂い)女子を描いた作品」、「推しのアイドルに起きた事件の真相を追う作品」など、登場人物が “推し活” をする様子を描いた作品が増えているようです。
すず木さんとしては、「推し活マンガ」では、読者が主人公に自己投影ができるのも、人気の一つと考えています。
2023年のヒットマンガのジャンルは、「タイムリープ」か
「ダークヒーロー」?
『東京卍リベンジャーズ』で話題になった「タイムリープ」ものも期待!
すず木さんは、2022年に大ヒットした作品の一つである『東京卍リベンジャーズ』で話題になったようなタイムリープ作品が2023年にもヒット作品として登場すると予測しています。
そもそも、タイムリープとは?
タイムリープとは、自分自身の意識だけが時空を移動して、過去や未来の自分の肉体に意識が乗り移ると定義されることが多いようです。
例えば、国民的マンガの『ドラえもん』では、ドラえもんやのび太などは、タイムマシンを使用することで自分の意識・肉体の両方で時空を移動することが可能です。こちらは、「タイムトラベル」と定義されますが、『東京卍リベンジャーズ』などでの、登場人物の意識だけが時間を移動する作品は、「タイムリープ」とされています。
もちろん、2022年の科学技術では、「タイムトラベル」も「タイムリープ」も実現不可能なので、作品によって、いずれの定義が若干異なる点はご注意ください。
「タイムリープ」ものでは、「友情」「サスペンス」「人生やりなおしラブコメ」なども…
2022年までの厳しい世界情勢の中、「やり直したい」というよりは、「もっとより良くしたい」というキャラクターが好まれるのではないかと、すず木さんは指摘しています。
すず木さんは、2023年のタイムリープもののヒット作品予測では、『ナインピークス NINE PEAKS』も挙げています。
こちらの作品では、筆者的にも、「もっとより良くしたい」という登場人物の意向がしっかりと現れているため、すず木さんの予測は、かなり的確だと考えています。
さらには、タイムリープをして友人の死の真相解明をするタイムリープ×サスペンス『君に二度目のさよならを。』や、アラサー女子が中学時代に好きだったドラマの再放送の時間だけタイムリープするタイムリープ×ラブストーリーの『さて、来週の佐々江さんは?』など、空想の世界だけでしかできない “タイムリープ” というジャンルを中心とした様々な設定や多彩なストーリーの作品も、2023年にはさらに流行するのではないかと予測しています。
やはり、世界情勢の先行きが不安な中、「タイムリープ」ものの作品はどんどん増えていくと考えられます。ネクスト『東リベ』の作品も楽しみですね。
「ヒーローマンガ」では、ヒーロー像に変化がありつつも、正義の本質を多元的に問う作品も!
「ヒーローマンガ」というと、『僕のヒーローアカデミア』といった作品が人気ですね。
今までは、勧善懲悪の王道ストーリーが多かったですが、すず木さんは、最近では、正義のヒーローだけでなく、悪魔の力を手に入れながらも悪魔を冷酷に倒していく凄惨なヒーロー『チェンソーマン』、怪獣を退治するヒーロー側が怪獣(悪役)になってしまったヒーローの物語『怪獣8号』、戦闘モノの悪役戦闘員が打倒ヒーローを試みる物語『戦隊大失格』などがフィーチャーされていると考えています。
すず木さんは、これらの作品から、従来の「ヒーローマンガ」ではみられなかった「ヒーローとは本当に正義の味方なのか」「正義とは一体何なのか」といった、多彩な情報の精査や多様性(ダイバーシティ)が必須となる “今” らしさが現れていると言えると指摘しています。
2023年のヒットマンガ以外にも、すず木さんにざっくばらんにお聞きしました!
一番かっこいいと思うキャラクターは?
公私共にマンガをたくさん読まれるすず木さんに、まずお聞きしたかったのは、「一番かっこいいと思うキャラクターは?」という質問。
すず木さんは、『東京卍リベンジャーズ』のマイキー(佐野万次郎)と即答されました。なお、ドラケン(龍宮寺堅)も気になられているようです。
話題沸騰中の「ジャンプ」作品で気になっている作品は?
人気作品を多数輩出する「ジャンプ」にて、すず木さんが気になっている作品として、『チェンソーマン』が個人的に気になっているほか、『呪術廻戦』と『鬼滅の刃』も欠かせないそう。
特に、『呪術廻戦』の推しキャラとして、「伏黒甚爾」(伏黒恵のお父さん)を挙げられていて、あまり出番がないことがつらいと話されていました。ここは、すず木さんからお話を聞いていた筆者も盛り上がったシーンでした。
もちろん、いずれの作品も、メディアミックスが進んでいる作品となっているため、マンガとアニメをそれぞれ両方楽しめるのも魅力の一つです。
すず木さんおすすめの昔のマンガはありますか?
マンガを公私共に数多く読むすず木さんに、筆者は、すず木さんおすすめの昔のマンガはありますか?とお聞きしたところ、再度読み返しても強いと思った作品として、『幽★遊★白書』を挙げられていました。
女性向け作品としては、CLAMPさんの『東京BABYLON』もプッシュしており、今の時代では当然となった “多様性” を先取りしていたところが良いとしています。
2023年前半で読んでおきたい作品はありますか?
今回、2023年前半で読んでおきたい作品として、週刊少年マガジンで連載中の『戦隊大失格』は欠かせないとのことです。
やはり、ヒット作品がメディアミックス展開されてることも多いので、『戦隊大失格』など人気が出てきそうな作品を早いうちから読むことで、メディアミックス展開の内容を予測する楽しみもあると思います。
今後メディア化しそうな作品はありますか?
筆者的には、マンガの楽しみ方の方法としては、一度、マンガそのものを読んで楽しむだけでなく、メディア化したドラマ・アニメから再度マンガを読み返すことにもあると思っています。
その視点から、すず木さんには、今後メディア化しそうな作品はありますか?とお聞きしてみたところ、すず木さんが挙げられた作品として、『女の園の星』と『九条の大罪』を挙げられていました。
やはり、世界情勢が厳しい時流でも、ドラマ化された作品でも、 “厳しいものをぶち込む” 傾向もあるとすず木さんは分析されています。もちろん、2023年の世界情勢がどう動くかわかりませんが、2023年以降、ドラマ化された作品の中では、 “厳しい” ものもあるのでしょうか?
高校生の方々に読んでいただきたい作品はありますか?
ブックライブでは、クレジットカード保有率の低い高校生や大学生
そこで、高校生でも気軽にマンガを購入できるブックライブのメリットを活かして、高校生の方々には読んでいただきたい作品について、すず木さんに、お聞きしてみました。
多くのマンガを読まれているすず木さんは、高校生ならではの “キュンキュン” 感を楽しめる作品として『ひかえめに言っても、これは愛』と『きみの横顔を見ていた』を挙げられていました。
高校生の方々は、勉強に部活、推し活などに忙しいかもしれませんが、少女マンガならではの恋愛モノが非常に楽しめるのでは、としています。
一般作品としては、『エクソシストを堕とせない』と『ガチアクタ』も良いそうです。
2023年のマンガは「ブックライブ」で!橋本環奈さん出演CMで話題の「ブックライブ」とは?
すず木さんが書店員を務める電子書籍ストア「ブックライブ」。橋本環奈さんが出演されているCMでお馴染みです。
ブックライブの大きな特徴として、全体的にシリーズもののマンガを読みやすいという点が挙げられてます。1巻、2巻、3巻と買った作品は、ユーザーが管理する “本棚” で見やすいように保存されますので、いつでも読み返しがしやすいようになっています。
もちろん、無料作品もあるため、お試し感覚で読みたい作品も探せますし、一度、購入した作品については無期限で読めますよ。
さらには、コンビニやファミリーレストラン、スーパーなどで貯めたTポイントを使えたり、PayPayといったスマホ決済、今話題のPaidyでの後払いができたりと、多彩な支払い方法でクレジットカードがなくてもマンガを楽しめるのがブックライブの魅力です☆
すず木さんは、ブックライブ内で特集コーナー「月刊 書店員すず木」を持たれているので、普段と違う作品を読みたい方はこちらも参照してみてください♪
- 月刊書店員すず木:https://booklive.jp/feature/index/id/tk_osusume
- 年刊書店員すず木 2023:https://booklive.jp/feature/index/id/tk_osusume2023best
今回のインタビューを終えて
2022年は、日本だけでなく、世界規模で様々な出来事がありました。2023年以降は今よりも世界情勢の行方が読めないことも考えられます。
そのため、社会から求められるマンガ像は随時変わってくることから、2023年のヒットマンガのトレンドを正確に予測することは難しいです。
しかし、2023年のヒットマンガのトレンド予測で紹介された作品だけでなく、それ以外の作品も積極的に読むことで、2024年、2025年とマンガをより良く楽しめるのではないでしょうか。
もちろん、長年、マンガ業界に携っているすず木さんは、「良い作品が日々生まれてきている」としていて、これには筆者も同意です。
実際、今までマンガを読んでいなかった層が、スマートフォンの普及によって、Web広告などを通じてスマホで手軽に読めるようになったことから、マンガ市場も拡大傾向にあるようです。
2023年、どのようなマンガが人気となるのか、期待ですね♪
[ブックライブ]